俺の推し漫画選手権

 漫画っていいですよね。漫画。

 ここ数年は自分のホンゲル係数も低下しつつありますが、それでもTLをどんぶらこ流れてきたなんか面白そうな本は、気がついたら自分のhontoの本棚に入っています。ただTLでよく話題になる本はもう騒いでるだけで周囲が乗ってくれますが、そういうのではない自分の推し本みたいなのはある訳です。

 というわけで今回は鬼滅とか金カムとかそういうのは除いています。あと忍者と極道みたいなのもTLではドメジャーなので除きます。俺の推し本を見ろ!!!

※なお、本のリンクについてはhonto.jpのものを貼っています。kindleとかより電子書籍が扱いやすいレイアウトなので…。

 

 

国民クイズ

honto.jp

日本国憲法第104条 国民クイズは国権の最高機関であり、その決定は国権の最高意思、最高法規として、行政、立法、司法、その他あらゆるものに絶対、無制限に優先する。本憲法もその例外ではない。』

『4時間の合法的な革命 国民クイズの時間です』

 最初からド派手な演出にキレッキレな台詞回しと狂気の漫画。これらの台詞に惹かれるものがあったらもう買い。

 「全体主義」を真正面から掲げるパラレル世界の日本国政府が、あらゆる自国民に対して大逆転のチャンスを与える番組として開催しているのがこの国民クイズ。ルールはほぼクイズ番組のそれだが、クリアすれば事前に要求していた願いを政府総力を挙げて叶え、チャレンジに失敗すると不相応の願いを持った人間として投獄されるという国が運営する非常~にハイリスク・ハイリターンなギャンブル。チャレンジ失敗の投獄とはイコール年単位の無償の奉仕活動であり、主人公であるKK47331号K田K一もその無料奉仕として国民クイズ司会を行っている。しかし犯罪者として奉仕活動以外のときは狭い独房に入れられながら、一度クイズの舞台に立てば国民からの支持率は異常なまでに高い……という捻れた背景を持っている。

 クイズ番組の端々に差し込まれる皮肉たっぷりの各省庁のCM、国民クイズ体制の妥当を目標とするテロリスト、そして大衆の幸福とは何か…?など、地雷原でタップダンスするような危険性と表裏一体のエンタメとして非常に面白い漫画です。

 

花四段といっしょ

honto.jp

 この漫画は、花四段という脳内がとっちらかった珍獣の生態を檻の外から眺める漫画である。つまり将棋が分からなくても読める。すごい!

 花四段は社会性に割り振るべきスキルポイントの大部分を将棋につぎ込んでしまったタイプの人間で、感性が小5くらいで止まってて、常に同じようなスーツなのはもしかしてコーディネートとかを考えなくていいからでは…?くらいのふわふわした成人男性なのである(表紙のキャラが花四段で男性です。念のため)

 Twitter公式アカでも読むことができるので、疲れて難しい漫画が読めないときのオアシスとして摂取するのがオススメ。

#花四段といっしょ まとめ読み! / Twitter

 

狂死郎2030

honto.jp

※この作品は性的な描写・グロテスクな描写・女性に対する暴行描写があります

 

 「えっ、今日は全員カレー食っていいのか!?」の元ネタ。

 あらすじ……ポストアポカリプスにしてディストピアな2030年、一般的な男女は核戦争で荒廃した世界のオアシス農場で隔離されて生活し、バーチャルSEXで性欲を満たす事が一般化していた。そんな中、バーチャル空間内でとある男女が出会う。主人公の狂四郎は相手をバーチャル人格の一つだと思っていたが、実はその女性(エリカ)は実在していた!狂四郎は生身のエリカと一緒に暮らすことを夢見て危険な旅に出発する…という漫画。

 狂四郎は元々後ろ暗い任務をしていた凄腕の軍人、エリカは超が付く凄腕エンジニアだけど不特定の男性に慰み者扱いされており、それぞれに強い所がありながら、お互いに「自分は本当に相手にふさわしい人間なのだろうか」と自問自答している部分がある。そして片方が弱い所に入りかけた時に、もう片方が引っ張り上げてくれる。そういう優しさというか信頼の描写がすっげえ良い漫画。

 全体的にお下劣下ネタパーリィなので人をかなり選ぶが、善悪で簡単に切り分けられない人々の描写や、大衆を効率よくコントロールする方法に特化したトップ集団など、人間心理の描写が凄まじい。それでいて技術的な部分でもしっかり骨太SFしているので、全体的に濃厚な読書体験ができる。

 

忘却バッテリー

honto.jp

 野球という競技の業や、それでも野球を自分の心から切り離す事が出来ない青少年たちを描くギャグ漫画

 甲子園が夏のくっそ暑い時期の昼間に行われる事に疑問を呈するタイプのツイッタラーが好きなタイプの漫画だと思う。でもギャグ漫画なんだ。信じてくれ。この絵柄で「パイ毛」をずっと擦ってきたり、エリート球児をAVで買収したり、歴戦の渋い顔した監督の語彙力が急降下して「ハイパーつよつよ高校生」って言いながら泡拭いて倒れるから……。

 ストーリーとしては中学シニア時代に野球の神様に愛された「本物の天才」を目の当たりにした山田くんを語り手として、彼が(大会で名前を聞くような)野球部のない都立高校に入るところから始まる。そこに何故か中学時代に見た「本物の天才」のバッテリー(ピッチャーとキャッチャーのコンビ)が居て、キャッチャーの方が何故かアホになっており、聞けば記憶喪失になっているという……というお話。

 よくある話で弱小都立の野球部を強くしよう!というシナリオなのだけど、その途中で否応にも高校野球の業を目の当たりにしていく事になる。

 まず「いいところまで行くけど世の中にはもっと凄い天才がいる」という挫折から、野球を諦めて都立に入った人間は山田くん以外にも居る。中学の時から厳しい競争環境にさらされ続けるのは果たして良いことなのか?という疑問提起がこの漫画には常に存在する。スポーツが好きで部活に入る事≒そのスポーツでトップを目指すことになってしまう事ってあるよね。

 そして野球強豪校になると高校の3年間をほぼそのスポーツに注ぎ込む事になるし、そこで芽が出なかった人間もいる残酷さも序盤で描かれている。更にエグい事に、かかった金額もコマに表示されているし、彼の名前自体が出ない。こんな追い打ちあるか。

 

 ただ業を描くだけではなく、野球の楽しさとかスター選手以外へのスポットの当て方も丁寧なので読んでて楽しい。例えば山田くんは目立たないけど目端が効くバランス型の選手なので、ここぞという時に良い判断をするし、スター選手たちから非常に信頼されているというバランスが良い。千早くん(めちゃくちゃ足が速いスター選手)が土屋先輩に対して「俺の足を邪魔しないのはあなただけ」っていう信頼を見せるシーンが凄く好き。スター選手が目立つけど、それ以外の選手との理解や信頼あってこそのチームという事がね……いいんですよ……(ろくろ)

 

エンバンメイズ

honto.jp

 

 ヤンジャン・ジャンプラで連載中の『ジャンケットバンク』作者さんの前作。全六巻。

 賭けダーツが裏社会の大きなエンタメになっている世界、百発百中とかいうレベルを超えたダーツプレイヤーが跳梁跋扈するギャンブル漫画。

 敵も味方もダーツ百発百中なら(最大得点は20*3固定のため)賭けが成立しないと思うが、ところがどっこい。通常のダーツのルールにプラスして、ゲーム用のビックリドッキリメカもとい様々なルールがある事によって大きな駆け引きを生むようになっている。ダーツだけだとそんなネタが持たないと思われそうですが、マジで面白いんですよこれが。

 そして主人公の烏丸が迷路の"悪魔"と呼ばれるだけあって心理戦に非常に強い。相手の高慢さや油断を見抜いて罠にかけるのが上手く、性格がとても悪い。罠が判明した後の表情は「邪悪」としか言いようのないものなので必見。それでいてかなりのお人好しなので、この両面性が非常に魅力であるキャラ。絶対相手にしたくない。

 ぼくが一番好きなのはホワイト戦です。あれ烏丸の性格の悪さとお人好しが凄く良いバランスで出てると思う。

 

彼方のアストラ

honto.jp

 ジャンプ本誌連載作品だからドドドメジャーじゃねえか!!!!という声が聞こえる気がしますが無視します。ぼくのTLで話題になってるのあんまり見たこと無いので。

 この作品は全五巻というお手頃な冊数で、ギャグと軽い雰囲気でサクッと読めて、それでいて芯は濃厚なSFサスペンスという逸品。

 宇宙旅行が一般的になった未来で、高校生たちが修学旅行的なやつで別の星に行ったところ、事故に遭い、遠く離れた地に飛ばされてしまう。彼らはたまたま見つけた古い宇宙船に乗り、道中にある星で水や食料を補給しながら故郷に戻る事を目指すのが大まかなストーリー。

 しかし宇宙船に乗り込んだ後に人為的な故障が発生し、メンバーの中に裏切り者が混ざっている事が判明。果たしてそれは誰なのか……。そしてメンバーたちもそれぞれに事情を抱えている事が明らかになっていく。

 読んだ後のカタルシスが凄い作品なので、ネタバレなしで一気読みして欲しい作品です。

 

 

おわりの森から

shonenjumpplus.com

穏やかな雰囲気のファンタジーSF。読み切りなのでサクッと読めます。