「冥人の愛した武具」小ネタ集

 全ての元凶スコヤさん(スコヤ (@suko_yaka7) | Twitter)と共同制作した同人誌「特別展 冥人の愛した武具」が遂に12/13に頒布となりました。

※ちなみに一部の解説文はbuCciさん(buCci (@cci_bu9244) | Twitter )に提供していただいています。

 

 通販は各サイトで行っているので、ついでに同じサークルの別の本もご購入頂けると嬉しいです(便乗)

ecs.toranoana.jp

araranosatto.booth.pm

 

 

 さて、このパンフ風同人誌、スコヤさんがイラスト・レイアウト・狂気担当、自分が文章・監修・頒布他事務関連・狂気担当で作成しました(一ヶ月位で)

 監修をするに当たってスコヤさんのイラストを修正して貰ったりなど指示をしていたのですが、細かくて伝わらないモノマネより細かいネタが大量に入っています。折角なので各記事に関する意図やら補足やらスコヤさんに行っていた指示を含めてここで開示しておこうと思います。

 

・原則として、全ての物が遺るわけではない。むしろ遺るものの方が少ない。そして歴史は今分かっているものしか分からない…というのを念頭に置いて紹介文等を作成している。

 だからこの展覧会が成功して、冥人の伝承がこの現在、更に広がることで、どこかの人が家に伝わるものを引っ張り出してきてくれるかもしれないし、博物館に予算が降りて倉庫に眠っていたものの研究が進むかも知れない。

この展覧会の時点では、伝承としての冥人が客観的な研究の目を通して、漸く一人の実在人物「境井仁」として朧気に姿を表したところを想定している。

 

・昭和四十年代、対馬の大規模な古文書調査があったという内容は現実とリンクさせている(長崎県立長崎図書館史料調査)

https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/publication/syoho/10/saiho_nagasakikenritsu%20nagasakitoshokan%20shiryou.html

 

○挨拶・冥人について・境井家について

・作中では滅亡した武家が多いため、武家伝来の文書はあまり残らないだろう…とするとどこ経由ならば文書や武具が残りやすそうかを考えた時、選択肢が寺社または鑓川になった。杉寺ならば典雄を経由出来るので、伝来の太刀は恐らく信頼出来るだろう人間に託されたのではという推測から杉寺所蔵になった。「寺宝として丁重に守るべし」の文を書いたのはきっと典雄。

 

・鱗紋は△の紋を指す。北条のトライフォースは三つ鱗。創作の家紋なのでそれっぽい名前を捏造した。

 

・ゆなやたかのような存在の名前は残らないと考えられるので、元々境井氏にそういった汚れ仕事方面の繋がりがあったのでは?と後世では解釈した…という形にしている。

 

・展示品については「境井家の太刀」など作中名称を知る人間が居ないという事、そして博物館らしい表記という事でわざと名称を原作のものからずらしている。

 

・ところで伯父上は仁の母の兄ってどこの情報だっけ……(書いた後気づいた)

 

○太刀・短刀について

・原作の太刀は樋(溝)が二本あり、ハバキの近くに家紋の彫りがあるのでそれを再現して貰っている。

 

・刀は中心が柔らかく、それを固い鋼で覆う形状にする事で耐久性を向上させている。これは固い鋼だけだと脆くなる為。そういう意味で最も衝撃に強いのは峰の方なので、傷が付く場合はそちらの方、それも達人であれば傷が中央付近に集まるはず…という事で矢傷や受け流しの時に付いたであろう傷を描いて頂いた。

 

・太刀の目釘孔の位置は「常闇之鬼」の2つ、「嵐之一族」の2つ、「雪夜叉之瞳」で鍔に近い方の目貫の位置が異なるので1つ、合計で最低でも5つは開いていそうなので、それを反映させた上で「嵐之一族」には使用していないであろう穴を塞いでいる。

 

・ハバキは刀に合わせて一対一で作られるものなので刀のページに載っている。

 

・通常の拵に保存すると錆びるので、長期間の場合は白鞘に保存する。その際、鞘に名称等が書かれたりする事があるのでそれを利用した。

 

・箱書きの日付に有る「閏六月」について。

 日本は明治に太陽暦になるまで江戸までずーっと太陰暦(月を基準とした暦)だったので、現在と月の計算がズレたりするのはそのせい。30日の大の月と29日の小の月を組み合わせ、いつどの月かは年によって変化する。更に閏日(一日追加)どころか閏月があって、一年が十三ヶ月になることがあった。それがこの「閏六月」

 あんまりにも複雑なので誕生日という概念が薄く、数え年で正月に一斉に歳をとった。年齢は十干+十二支の組み合わせにより60年で一周する干支で認識していた。

 

・闇討に使う短刀はガードには使わないので傷は無いだろうけど、回数を使って研ぎ減りするのでは…という事で、刃を小さくして溝を思いっきり削って頂いた。なので刃が本編のものより引っ込んでいる。

 

・短刀の目釘孔の位置は「常闇之鬼」の2箇所、「嵐之一族」の鍔側の1箇所を反映させている。

 

・青漆塗鞘太刀拵というのは実際にある拵の名称を組み合わせてそれっぽいものにしたもの。作中では「嵐の一族」

 

・金属の箔が削れて下が錆びるだろうと思われるので、剥がれた部分に黒ずみと錆が浮いている。また、柄巻は布なので、握った痕跡や擦れて切れた部分を作って貰っている。

 

・帯取は太刀を吊り下げるための金具。太刀を「佩く(刃を下にして吊り下げる)」為に必要なものだが、作中は「差して」いるのでそれが無いという事を説明文に反映させている。

 

・太刀側の鍔には刃の方に鍔迫り合いで出来た欠けを入れて貰っている。

 

・解説文に「浅い腰反りに二筋樋、板目肌、小乱れに葉が交じる。美術的価値にも優れた一品」みたいな文を入れようかと思ったけど、刀の展示会なら兎も角、歴史的な展示会にはそんな文入れないな……と思ったので没。

 

○弓

・木材に竹を埋め込んだ複合弓を、材料が離れないように縛り付けるのが藤。矢摺重藤は巻き方の名前。平安時代には木のみで作った弓もあったが、ゲーム中では強化素材に竹があるため少なくとも複合弓ではあるだろう。外竹弓か三枚打弓どっちだ、しなり方見るに後者かとか考えていたけど、そもそも何弓とか展示では書かないなハッハーとなったのでその文面はお蔵入り。

 

○旗

・旗と来歴はきっとあの旗集めニストの僧が遺したやつ。長尾の拠点が分からないが、規模的に中山砦でいいんじゃないかと思ってそうした。

 

○くない(手裏剣)

・くないが手裏剣となっているのは、「くない」という名称が伝承しなかったため、最も近いものの名前を後世の人が付けたという解釈。

 

○馬具

・馬具は漆塗りの木材で、漆は環境が良ければ結構形状が残るという事からほぼ形を残して縁だけ欠けさせたり矢傷を付けて貰ったりしている。

 

○冥人の鎧

・紺糸縅黒漆塗二枚胴具足という名称はそれっぽい鎧名称の寄せ集め。縅は草摺(スカート部分)などの板を括り付けている糸のこと。二枚胴は胴の形状の話だが、通常より継ぎ目が多いのでこれが正しいか分からないけど、関節は一箇所なので多分これで良いのでは。

 ゲーム中で既に接ぎや傷が多いので、材料の少ない中作ったんだろうな…という事が想起出来てしまった。ウッ(辛い)

 

○加冠状

・一枚くらい古文書があった方がリアリティあるでしょという認識から作った加冠状(元服した時の書状)

 

・仁の幼名が分からないので虫食いで潰し、志村の諱もわからないので官職で誤魔化した(普通は諱を書く)。志村の官職は当時の地頭職だった宗氏の官職を反映している。この文書の文面も対馬古文書にあった加冠状の文面をほぼそのまま流用している。時代は室町期のものだがそこは気にしない。

 

・花押(サイン)については志村は誉の文字の記号化、境井のものはそれをやや変形させたもの。

 

○御守

・御守は紙なので日光劣化で黄ばんでたほうがそれっぽいでしょうというアレ。

 

○冥人奇譚

・冥人奇譚は後世の冥人研究の撹乱になってしまったのも冥人奇譚だけど、冥人の物語が脈々と受け継がれて後世に再発見される切っ掛けになるのも冥人奇譚だったりしたら浪漫だよなという認識でコラムを書くなどした。立派な立役者の一つという認識。つまり現代まで「冥人」という存在を伝えたのが行善先生で、そのお陰もあって各地に残された冥人の遺産が回り回って保全されてた的な。