壱岐へ行きたい~Ghost of TsushimaDC版~

ツシマ本編に新コンテンツ来ました!!!!!やりました!!!!楽しかったです!!!!完!!!!

 

とまあそこで終わるのは簡単なんですけど、かなりツシマ本編で語られていなかった部分の補完が多く、既存でほぼ名前だけの状態だったキャラたちの掘り下げもあったので、案の定語らずに居られないわけです。それではGO。

(※ネタバレだらけなので畳んであります。読みたい人は下の「ネタバレ」をクリックしてね)

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ

 

赦しとは何か

 人を赦せるのは人だけ、もっと言えば生者を赦せるのは生者だけという印象の譚でした。

 結局のところ、死んだ人は死んだ後に自分の意志で残せるものなどありません。記憶に囚われているのは生きている人間の方で、それは仁だったり、丶蔵だったり、ふかだったりします。そして正が仁や丶蔵を恨んだり、馬具に呪いをかけたりしているかは誰も分からず、生きている人間たちが時にそう思い込んでいるという話だと思います。そういう意味でも「正の形見」クエストは重要だと思います。

 15年前に非業の死を遂げた正のものだから、きっと呪われている「だろう」と村人たちは思い込んでいます。それを息子である仁が探すことで、正が呪いなどかけていない事、そして親子が全く違う存在である事を生き残りたちに印象づけることで因果を絶ちます。あれは「境井正の息子」から「境井仁」になるためのイベントだったのではないでしょうか。

 そして丶蔵に関しても、命を救わなければならなかった。何故かといえば、境井仁は境井正のやり方に反発を抱いていて、敵討ちを望んでいるのも生前の正ではなく仁の中の後悔の記憶から作られた正だから。あの時点で殺してしまうと結局仁は正の息子である呪縛から逃れられず、壱岐を救うという最初の目的から外れてただの敵討ちに来た人間になってしまうから。そういう意味で、「貴方は貴方の選択をした、私は私の選択をする」という形で自身の記憶に決着を付けたのは素晴らしいと思います。

 それと、赦しという意味で言うとあらゆる部分でそれをなぞるような浮世草がありましたね。今ここに発生した憎しみという意味で、どちらかしか人質を助けられない浮世草。ふかが自らの子の過ちに対してどう接するかという浮世草。杉が蒙古に寝返った弟に対して戦う浮世草。過ちを犯したり、恨みを抱かれた肉親に対してどう対応するかというのが三者三様で面白かったです。

 あと壱岐之譚はかっこいい女性多いですね。ふかとか、杉とか、椿とか。

 

武士としての境井正、父親としての境井正

 この旅で境井仁は父の記憶に向き合いました。恐らくは死の直前のインパクトが強すぎたのと、ずっとよそよそしい態度だった事が印象に残りすぎて、細かいところを意識する事が無かったのだろうなと思っています。でも当時は分からなくても、後から思い返すと分かるという事はしばしばある事だと思います。昔読んだ作品を今読むと印象が変わってくるように。

 そしてものっそい掘り下げが来た仁の父親こと境井正ですが、大枠ではおよそ百合との話で出ていた部分でしたね。仁にとっては厳格な父で、百合から見るときちんと愛情を注いでいるのは分かるという。ただそもそもの態度がどこかよそよそしいので、それが果たして愛情なのか仁には判別が付かないのでああなったのでしょう。

 記憶の中では妻(千代)が死んで心の何かが欠けてしまった事、甲冑の確認時に怒るのではなく「次に気をつければ良い」という事を言っている辺りにただの厳格な人間ではない所が読み取れるのですが、当事者かつ若年だとそこを読み取るのは難しいでしょう。ただでさえ境井仁(はっきり言われるまで気づかない人間)なので。

 正が壱岐に来て初めて仁が武士としての素養をきちんと備えている事を理解した事や、仁が「あの時初めて父上に頼りにされた」という事を言っている辺り、この親子のディスコミュニケーションっぷりが見えて頭を抱えますね。ここまで来ないと分からんのかい。

 正は多分あの発言もろもろを見る限り、戦場ではスムーズにコミュニケーションが取れるけどご家庭では嫁が常に間に入っていたのもあり、息子との距離感がつかめなかったのでは無いでしょうか。そもそもが多分ツシマに出てくる武家の中で一番鎌倉武士してる個人なので、戦場に特化し過ぎた結果、ご家庭のコミュニケーションに齟齬を来している可能性がありますね。ブラック企業の環境に過適応した結果、家庭がボロボロになるみたいな…なんか絶妙によくあるご家庭の話になってきたな。つまりは仁が戦場に来ることでようやく正がコミュニケーションを取りやすい場が整ったという話で、境井の兵という話を間に噛ませることでどうにかなったという…安達殿が居て本当に良かった。

 あの父親なら仁が行方不明になったら血眼で探したり、賊に追われたら全力で追いかけ回すのも分かりますね。言葉の端々から息子を気遣っているのは分かるので。残念なことにそういった愛情表現が全然仁に伝わらなかった訳ですけど。ちゃんとそういうのは言葉にしましょうね(反省)息子が自分を助けに行かなかった事も恨むとかそういう事は無さそうに思うんですけど、それはあくまで傍から見た時の話ですし、仁を苛んでいるのはあくまで「仁の中の正」なので、仁が自分自身で解決しないといけないという事ですね。少なくとも最後のシーンで風が人型を取った≒仁の選択を正が受け入れたという事だと思うので、あれはやはり仁のイメージした正でしょう。風は闇討しても冥人になっても境井家が武家でなくなっても導いてくれる訳ですから。

 あと自分の仕事はここまでで後は志村殿の仕事、みたいなビジネスライクな割り切りがあるのが、今まであまり出てこなかった部分なので良かったですね。境井は戦働きがメインで統治は志村。鑓川で境井が志村の犬扱いされるのも納得ですね。境井の兵の話、聞けば聞くほどサイヤ人か何かに思えて仕方ないです。仁も剣の腕としては島一番だし……。部下に対しても意図して壁を作っていたので、その辺は仁と結構違うなと思いました。

 壱岐の某村での虐殺については思い当たる部分があって、「一人でも子孫を残すと復讐されるから一族族滅」みたいなのが鎌倉時代にはあったりするのでまさにそれだなあみたいな気持ちになっています(霜月騒動とか)。

 

 あと、仁が何故に伯父上とか竜三とか近い人に限ってコミュニケーション齟齬を起こしやすいのかという事に、壱岐で身内へのコミュニケーションに支障を来している父親と幼少期一緒に居たからみたいな回答をお出しされてぐうの音も出ない。適切な距離の測り方を学習出来るタイミングが無かったんだ…。

 

母上の思い出について

 名前が遂に出てきましたね千代さん。聡い女と名前で脳内ビジュアルが某あずまんが大王の方になってしまったのは秘密です。

 今まで出てきたのが病で倒れる前後のものが多かったので、今回の話で大分愉快な人だったのでは疑惑が出てきましたね。鹿が好きとか猿のようにダイナミックに笛を吹くとか、茶碗を割って格言めいた事を言うとか。あと勉強サボって遊ばせるとか。もしかして幼少期の仁が志村城をしばしば抜け出していたとか、和歌を読むより川で遊ぶのが好きとか、大体が千代の教育の賜物なのでは?????仁がやけに動物に好かれるとかそういうのもそちらの血筋の気がしてきた……。仁が生まれた頃の話に蛍だの狐だのが出てくるのもそういうことでは……。

 仁が幼少期に蝶に意識を取られて志村の目の上を小刀で突いてしまう話がありましたが、その時の志村はもしや「間違いなく千代の子だオモシレー」くらいの気持ちで笑っていた疑惑が出てきました。怖いですね。この辺がどういうきょうだいだったのか気になるところです。話だけ聞くとどう考えても千代の方が振り回す側でしょ……。あと鑓川で戦死した弟なんかも居る筈なので、その辺も気になります。つまりサイバパさん鑓川の戦いコンテンツ下さい(懇願)

 そういえば三割くらいネタで言ってた父上≒風が壱岐の最後で風に舞った花弁で形作られた人影が現れてほぼ確実になった訳ですが、そうすると結構な確率で母上≒鳥も成立する訳であり…鳥を追いかけて崖から落ちた息子に「急がば回れという言葉があるのですよ」とか言ったり、ポリゴンめり込んだ状態で「大事なのは己の目ではなく心で見るのです」とか自信満々に言いそうだなって思いました(こなみ)

 

長尾家について

 全く情報が無かったものだから、壱岐に長尾家が攻め込んでいる情報が飛び込んできてびっくりしました。話しぶりからすると境井の襲来と同レベルでヤバい出来事だったようなので、物凄く気になりますね…。

 追記:後から見直すと忠頼の鎧のところで伝承の中に海賊が出てるので、それですね。

 

霊薬について

 仁含めて飲まされた人間が見ているのは当然ながら幻覚なんですが、恐らくあれは「バッドトリップ」という奴でしょう。道中で見ているものも完全にフラッシュバックなので、そういったものを誘発する向精神薬成分が含まれていると考えられます。

大麻 - 埼玉県

 本編の「蒙古の品」にも薬物の話がありましたが、これもそういうものでしょう。

 じゃあこれで悪い記憶と向き合わせて己を乗り越えられるんだね!良かったね!……とはならないのが人の常。これで克服できましたなんてのは天空闘技場200Fで殴られて念能力開花させる位に乱暴ですよ。

 催眠療法なんかもありますが、使っているのがオオタカ族なので恐らくそういう事はしないでしょう。本編でハトゥンに導かれているような言葉がありますが、薬で朦朧としたトランス状態の仁が過去の事を話してしまった際に、都合のいい事を刷り込んでいる可能性は十分にあると思います。トランス状態はただでさえ判断力が低下しているので。

 人間、誰しも結構な割合で忘れたい出来事もあるでしょう。それを無理やりほじくり返すと物によっては受け止めきれずに心が壊れるのも必然です。多分竜三ならすぐ発狂すると思います。
 後ろ暗い事が無い人間でも「祖先の罪」として有る事無い事をトランス状態の時に吹き込んでやれば一発ですよ。誰も確実な過去なんて分からないし、15年前の境井の襲来でさえ話す人によって内容が違ってくるんですから。

 ハトゥンは祖先の罪だなんだ言ってますが、じゃあお前の今行っている事が罪ではないとでも言うのかという話にもなるの辺りが、自分がハトゥン気に入らねえとなっている理由の一つだと思います。そういう論理のシフトのさせ方するの、大体悪質なカルトのやり方なんで…。

 ハトゥンの「救い」って何か考えると、お薬や刷り込みで考える力の方を消すとか、意志の方を無くしてしまうとか、ハトゥンに従う従順なお人形さんになる方向しか思い浮かばないんですよね…人間、自分の頭で考えるというのは結構なコストがかかる行為なので、意志や考えを他者に委ねるほうが楽な生き方になっちゃうんですよね。

 追記:ハトゥンの発言は中々比喩的で分かりづらいんですが、『祖先の罪を償う』というのは祖先の行った罪を直視し、そしてそれに対して自信が相応しい行いをする事でその罪を清めるという話になるんでしょうかね。シャーマンは死者を自らに宿す能力を持つ者だし、それを行う前段階として祖先から自らを開放≒祖先の罪の精算が必要になるという話なんだろうか。そして罪のない者となり白い道を歩む(自称)
 ここまで聞くといい感じの事に見えますけど、この"祖先"というのはあくまで本人の脳内で形作られた人格なので情報の偏りや解像度によってどうとでも変化しますね。仁の中にある正像がまさにそれ。そしてハトゥンがたびたび介入していたように、ハトゥンに都合の良い祖先像さえ作り上げれば行動も操れる。
 ハトゥンの発言で変な部分があって、ひたすら祖先の罪を問うているのに仁が正を見捨てた事や、仁が正の所業を"止められなかった"のは祖先(正)ではなく仁の罪のはず。仁を「祖先」に仮に入れたとしても、その精算として正の敵討ちを持ってくるのもおかしい。何故かと言うと罪を負った人間の願いを叶える事になってしまう。本来は断罪すべきではないでしょうか?

 ただこの「おかしい」という部分はプレイヤーが客観的に見られるからであって、仁のように「それはそれ、これはこれ」出来る人間の方が少数派なんでしょうね。特に毒で判断力が落ちた状態だと。最後にきちんと正の罪と自身の罪が切り分けられたからこそ、仁は戻ってこれたんでしょう。

 

堅二、お前がナンバーワンだ

 凄惨な壱岐に彗星の如く現れて笑いをかっさらっていく男こと堅二。正直な所、あの幻覚と戦い続ける世界では貴重な癒やし枠でした。その部下(?)のふぐも含めて。相変わらず目的はいいのに手段が酷いので恨みを買い続けているのにも笑いましたし、「助けて下さい」に対して自分と仁が「お断り」でシンクロしてしまったのにも笑いました。地味にレギュラー陣の中でクリア後も生存していて、かつあちこちに移動してても違和感の無いキャラという意味での抜擢でしょうけど、なんか凄かったですね(オブラート)。石川先生と別ベクトルで「こいつは雑に扱ってもそうそう死なない」と仁が思っているのをひしひしと感じています。むしろ厄介事しか持ち込まないので見捨てたい。わかる。

 

安達晴信かっこよくないですか?

 完全にダークホースだった安達殿。仁の記憶に出てくる度に株が上がりました。仁と賭け事をしたり、気遣いをしたりと滅茶苦茶に面倒を見ていましたし、何より最後の記憶の「境井殿のご下知だ!」のシーンが仁の意思の尊重と有無を言わさぬ威厳を感じて非常に良かったです。コトゥンバーニングで一撃死するには惜しい漢だった…。

 色あせた書状(だったかな?)を書いたのは「境井殿」という言葉や和歌を詠める学がある事から恐らく安達殿だと思うんですが、あらゆる潔さみたいなのがあって全体的に格好良さが増していますね。結果的に死んだのは正の方だけだった訳ですが…。あの状況から仁を連れて生還しただけでもかなり凄いと思います。

 完全に安達の夫妻が「おもしれー男とおもしれー女」になってしまったので、夫婦の話も見たいです。サカパンさんお願いします(n回目)

 

そもそも15年前にどうして境井の襲来があったのか?

 なんとなく考えたことがあるので書いておきます。

 話の内容から察するに、志村家の命令によって武家が派遣されている。武家による秩序という話があるので、土地を増やす侵略戦争というより治安維持のためと思われる。じゃあ何故離れた島の治安維持が必要かと考えると、海賊(倭寇)問題の件ではなかろうかと。

 兎麦の五郎関連のクエストで禁制の絹の話もありましたし、志村家の自治という意味で流通の管理なんかも行っていたでしょう(何故に禁制になるのか考えてみましたが、上県の養蚕の集落で作っているであろう地場産の絹の価格安定のためかな?)

 リアルな方の対馬でも交易で食っている土地として海賊問題は深刻な問題でした。一五世紀の朝鮮では倭寇禁圧の見返りとして対馬へ米を送るという事もあったようです(対馬宗氏の中世史 より)

 海賊が居ると当然ながら船を襲います。交易船なんかは価値の高いものを大量に積むので特に狙われやすい。対馬周辺の海賊を抑え込んでも、それらが壱岐に居ては同じように船が狙われてしまい、安全な外交・移動ルートの確保が出来ない。そういう状況を鑑みて、志村家は壱岐制圧・秩序の回復を命じたのではないでしょうかというのが自分の考えです。

 

動物が可愛い

 シカチャンカワイイッ!!!!!オサルノオンセン!!!カワイイ!!!クロデノリクハカワイクナイ!!!!!ネコチャン!!!ネコチャンコロコロモフモフ!!!!!ンネコチャン!!!!!!!!ニャーン!!!!ニャーン!!!!!!!

 

丶蔵について

 スキニー履いてるのか?と思うくらい細い丶蔵おじさん。彼がどのタイミングで仁が境井仁である事を確信したのかと考えると、まずは毒を飲まされた仁を介抱した時、仁の発言から「刀を舐めるように見ていた(意訳)」とあるので、既にそこで確信じゃないにせよ薄っすら気づいてた可能性はあると思います。拵が「嵐之一族」だと思いっきり家紋が付いてますし。

 それでまあ確信になったのは恐らく拷問した蒙古が探している相手が「境井仁」だったという可能性が高いですね。嘘だって言ってるのは信じたくなかったからとか。「父親は鬼だったがあんたとは」というのは本心でしょう。最初は毒にやられた姿を見て放っておけなくなったんでしょうけど、その後の発言や友を埋葬した事で「これはあの侍とは違う」という事を理解したのかもしれません。ただ船を奪う際に仁の手並みや仁が他の海賊に命じたり鼓舞したりする姿の方を見て「こいつは境井仁だ」と確信したのかと。壱岐に冥人の噂は来てないだろうからスニーキングする姿で確信してはいないはず…。

 しかし丶蔵は基本的にあまりにも面倒見が良すぎるので、最初の方でも毒でやられた人びとに躊躇なく自分の着物を裂いて使わせてるんですよね。最後の別れの後でも毒でやられた人々のところへ行ってるし…。
 最後のオオタカ戦同行は仁の行く末を見届ける覚悟があったのだろうし、もしかしたら仁の父を殺した精算もあるかもしれないし、シンプルな理由じゃなくて色々な理由から選んだ結果なんだろうなと思いました(感想文)

 そういえば丶蔵の友人を埋葬したとき「来世」という言葉が出てきたのは完全に伏線でしたね。(来世も衆生仏教用語