日本ゲーム大賞優秀賞！(挨拶)
ドはまりするとアホみたいに特定のゲームの記事を重ねてくる事で名高い私、PS5・PCゲームGHOSTWIRE:TOKYOのゲームの中で「ラスボスこと般若の主張、なんか変じゃね？」という気持ちになったので考察っぽい感じで筆を執った次第です。
ネタバレもあるので畳みました。見たい人は下の「ネタバレ」をクリックしてね。
ネタバレ
変だな―って思ったのは大きく分けて2つ。
・魂って言うほど不変か？
・取り戻したい「妻」の定義って何さ？
多分、般若が元科学者という肩書を持っているので余計に引っかかったのだと思っていますが、とりあえずそれぞれについて語ってみましょう。
①魂って言うほど不変か？
魂を熱力学的なエネルギーと同じふるまいをすると仮定しよう
科学者(のちの般若)の音声ログ『File329』では、パンケーキの話から熱の移動、そして魂の移動に移り、魂がどこかに移動しただけなのなら取り戻せるはずと考えます。
思考の起点になっている熱の移動という話は、エネルギー保存則の話と考えられます。エネルギーというのは電気エネルギーや位置エネルギー、熱エネルギーなど色んな形態がありますが、エネルギーの形態が電気エネルギー→熱エネルギーのように変化しても、量(ジュールとかカロリーとか)を全部足した値は同じという法則です。
(熱力学第一法則の式：Q(内部エネルギーの変化量)=ΔU(熱量)+W(仕事量)
仮に魂がエネルギーの一形態であれば、一定の区域の中のエネルギー総量は変化しないため、「魂がどこかに移動しただけ」というのは正しいようにも思えます。ここまでは。
魂が不変の保証は存在しない
エネルギーは上の項目で話したように、別の形態に変換可能です。そう考えると、魂のエネルギーも熱・光・位置・運動エネルギーに変換可能という話になります。
現に般若は集めた魂をエネルギー源として冥界の石(伊邪那美命が黄泉平坂を塞いだ石かな？）を破壊しているので、その時点で集めた魂の一部は(石の)位置エネルギーや熱エネルギーなどに変化したり、少なくとも元の魂から100%不変の状態ではない筈です。
では魂をエネルギー源として使わなければ不変では？という話になりますが、デフォルトで魂がどうなるかを考えてみましょう。
例えばKKは魂の状態で人格を保っていますが、冒頭で消失の危機を回避するために暁人くんに憑依しています。他にもサブクエで浮遊している霊魂が条件を満たすだけで簡単に成仏します。ここから、魂オンリーという状態は現世だと非常に不安定な存在という事がわかります。これについて、エドは『霊魂の流動性』で生命活動の停止により霊魂は冥界への移動を開始するという旨の事を話しています。
熱力学的に魂の移動の話を考えてみましょう。移動が現世から冥界へ一方通行である場合、これは不可逆反応と見なせます。
不可逆反応は「理論上は戻せる可能性もありえるけど、ダイス1億個振って全部0出せみたいに条件が無理ゲーすぎるので実質不可逆」と考えてください。エドが言っている「狂ってるとしか言えない」は倫理的な問題もありますが、「何言ってるんだお前」的ニュアンスもあると自分は考えています。
さて、身近にある物質は基本的に不安定な状態から安定な状態に移行する機会をいつでも虎視眈々と狙っていて、その状態変化には必ずエネルギーの移動を伴います。この安定状態への移動を霊魂の移動に当てはめる場合、「魂は冥界に移動する方が安定する」で、Ghostwire:Tokyo内の場合はその時のエネルギー移動分をエーテル結晶体が担っている可能性が高そうです。
さて、ここで問題です。「現世にある魂 → エーテル結晶体+冥界にある魂」この両辺にある魂は完全に同一の存在と言えるでしょうか？
もっと言えば、KKや凛子さんは形や人格を保っているためそこまで変化がないように見えますが、通常の魂(その辺に浮いてる連中)が肉体から離れる前と同じ人格を保っている保証は無いのです。そもそもが不安定な状態なので。怨霊になった奴らとかを見ると分かりやすいかと思いますが…。
魂の記憶・人格を保ってるものってなんだろうな仮説
これはもう自分の仮説ですが、
- 肉体もしくはその代替品
- 執着などの強い感情
この辺だと思っています。
まず肉体は霊魂を現世に安定させるための器であり、魂が冥界に引っ張られるのを防ぐものと考えられます。基本的に記憶なんかは脳内のネットワークで形成されているので、霊魂になったら多分そのネットワークを擬似的にエミュレートしてるんでしょう。
仮説に仮説を重ねますが、人間の身体で維持エネルギーが一番多いのが脳なので、魂の維持エネルギーもそこが一番かかっているのかもしれません。大事なところしか残らないとか、別の強い感情(エネルギー)に影響して変化するとかはありそうです。
代替品って何ぞ？という話ですが、こいつは他者の肉体または形代と考えられます。
KKの場合は暁人くんの肉体を間借りして維持しているので、エーテルとの親和性が高まるほど(単純に出力できるエネルギーが増える分)維持が楽になる。
凛子さんの場合は魂を一時小面(絵梨佳の肉体)に吸収されていたので、結果的にある程度まで維持できた。それ以降霊魂での登場はほぼ無いですが、転送機になった公衆電話は形代として代替できる機能もあるのでしょう。
形代は魂の回収に使用しているアレですが、エドも大量発注しているので、転送機の向こうにも形代があって、肉体が戻ってくるまで一時保存しているのでしょう。多分。
ちなみにですが、肉体って飯食ってエネルギーに変換して老廃物を出して、常に代謝し続けてるんですけど、外界の環境(低エネルギーになろうとするセオリー)に逆らい続けるためなんですよね。これを「恒常性」と言います。
この恒常性というのは非常に厳密なバランスで成り立っているため、人体は外界から何重ものバリアを張って生命活動を保とうとします。なんですけど、バリアとは言え環境の変化に対応できる部分にも限界があるので、しばしば人間は怪我をしたり病気したりする訳です。
身も蓋もない事を言うと、自然界のルールからすれば死が理不尽っていうか生きてる方が不自然。だって止まってる方が安定なんだもの(熱力学的に)
②取り戻したい「妻」の定義って何さ？
個の定義の話をしよう
Ghostwire:Tokyoの世界では人間は肉体と霊魂で出来ていて、それが分離可能なのでよくわからん事になっています。肉体と霊魂がセットの通常状態であれば本人確認書類や生体認証で「個」を判別しますが、霊魂だとそうはいきません。物への干渉は制限されるし、よっっぽどでないとふわふわした感じになるし。ざっくり言えば「人格」とか「記憶」とか、それを他者とすり合わせて個を主張するしかないでしょう。
そんでまあ、さっき言った魂のエネルギーがどうの以前の話ですが、人格とか記憶って生者でも変化するんですよ。
例えばショックな出来事があれば荒んだり悲観的になったり、脳の損傷や老化によって物理的に人格が変化する事があります(高次脳機能障害、痴呆など)
記憶であれば、人間は様々な事情により嘘の記憶(虚偽記憶または過誤記憶)を作ることが分かっています。
そうでなくとも恨みつらみや他者の感情で変化しやすい霊魂のことを加味すると、魂のみの状態で本人証明をするというのはかなり難しいと思います。
まあ暁人くんも事件前と後で「人が変わった」とか普通に言われそうだし…。そんなもんよね。
冥界を繋げたからどないなるねん
さて、般若の目的である「現世と冥界の境界を無くす」、魂って不変？という話のところを踏まえると、こんな感じ。
- 魂は冥界の方が安定するので、勝手にそっちに行く
- 現世と冥界の間には浸透膜みたいに魂を一方通行で通す境界がある
浸透膜っていうのは「水分子は通すけど、塩の分子は通さない」みたいな性質を持っている膜の事です。
科学実験の話ですが、塩水とただの水を混ぜたら、最終的に濃度が一定の塩水になると思います。この塩水と水の間に浸透膜があると、濃度差がある状態で安定します。
- じゃあ浸透膜ぶっ壊せばみんな一緒じゃ！ガハハ！
って言ってるのが般若です。まあ熱力学に沿うとすれば、実際にぶっ壊したら現世も冥界も全体が均一の状態になるんでしょう。
そしてここには問題が幾つかあるんですけど、一番でっかいのがあります。それは「周辺環境が変化するため、魂がそのままでいる保証がない」
魂がそもそも不安定な上、環境が激変する状態で、霊魂が人格を保ち続けられるか？？？最悪の場合、肉体がないので保護するものがなく、冥界ほど魂が安定しないのでどんどん別のエネルギーに変換されていき、全部熱エネルギーに変換されました～完～も普通にありうるという。
般若が欲しかったものって
まあ普通に考えて「妻が病気で倒れる前の家族を取り戻したい」なので、娘を生贄にした時点で絶対に家族に戻れない事が確定しているのに突き進んじゃったのは、目標設定からおかしかったからだね。これが論文発表の場だったらAbstractからおかしいって総ツッコミを受けてる状態なんですけど、残念なことに般若は頭がおかしくなってしまったので査読を受けられなかったんですね。かなしいね。
ついでに言うと冥界からおんぶしてきた娘＆妻ってあのオソロのオシャレ装束付けてるから純粋な魂じゃなさそうなんだけど、あれ何なんですかね。
